税務調査の事前通知・無予告調査とは?どう対応すれば良い?
目次
税務調査とは
日本では、納税者自らが税額を計算・申告して税金を納める「申告納税方式」がとられています。
「税務調査」とは、この申告が正しく行われ、税金が正しく納められているかどうかを確認するために行われる調査のことです。
調査官がいきなりやって来てドラマのような捜査が行われるというイメージを持っている方も多いかもしれません。
しかし、あれは悪質な脱税事件を暴くために行われる捜査であり、一般的な税務調査とは違って刑事事件として立件することを目的としています。
実際にそのような捜査が行われることは滅多にありません。
税務調査の流れ
個人事業主の場合は通常1~2日、中小法人の場合でもだいたい2~3日で終わるのが一般的です。
初日は、まず事業に関する説明を求められ、現金のチェック、帳簿や領収書などの書類のチェックへ進んでいきます。そして、調査で挙がった疑問点や指摘事項の指摘を受けて1日目が終わります。
2日目に、1日目に指摘を受けた事項に対する交渉が行われたり、その他調査官が必要と判断した調査が行われたりします。
そして、最終的にまとめられた指摘事項が伝えられ、納得すれば追徴税額が決定するという流れになります。
「事前予告調査」と「無予告調査」について
税務調査は、税務署から事前通知があったうえで行われる「事前予告調査」がほとんどですが、「無予告調査」と呼ばれ、通知なしでの調査が行われることもあります。
突然、税務署から「税務調査をします」と連絡があったらどうしますか?
調査官たちが連絡もなく押し掛けてきたらどうしますか?
いざという時にどう対応すれば良いのか、対応時のポイントをご紹介します。
事前通知が来たときはどう対応すれば良い?日程変更も可能です!
税務調査が行われる場合のほとんどが、税務署から「事前通知」があったうえで行われる「事前予告調査」になります。
事前通知は、基本的には電話で行われることが多いです。
ある日突然、税務署から電話がかかってきて以下の項目が通知されます。
■実地調査を行う旨
■質問検査等を行う実地の調査を開始する日時
■調査を行う場所
■調査の目的
■調査の対象となる税目
■調査の対象となる期間
■調査の対象となる帳簿書類その他の物件
■調査の相手方である納税義務者の氏名及び住所又は居所
■調査を行う当該職員の氏名及び所属官署
■調査開始日時又は調査開始場所に関する変更事項
■事前通知以外の事項について非違が疑われることになった場合には、当該事項に関し調査を行うことができる旨
ここで、突然の通知に慌てないようにしましょう!
事前通知の際に調査を行う日時が伝えられますが、ここで税務署から通知された日程で、言われるがままに承諾する必要はありません。
日程調整をすることは可能なのです!
税務調査を受けるにも事前準備が必要です。
いきなり日にちを伝えられても、対応できません。
「いろいろ予定がありすぐに決めることが難しいので折り返し連絡する」と伝えて一旦電話を切り、自分1人で対応することに不安がある場合は、税理士に相談するのも1つの方法です。
事前通知時に日程を決めた場合でも、その後、一時的な入院・親族の葬儀・業務上やむを得ない事情が生じた場合などには、日程変更の調整をしてもらうことは可能です。
上記の例以外にも、合理的な理由があれば日程変更の協議は可能なので、調査官に申し出るようにしましょう。
とは言え、あまりにも先延ばしすることは調査官からの印象も悪くなってしまうため、好ましいことではありません。
また、税務調査のほとんどが「任意調査」と呼ばれる調査になっています。
しかし、「任意」という言葉に注意しなければなりません。
どういうことかというと、「任意」であるなら税務調査を断ってしまえば良いのではないかと思ってしまいますが、税務調査自体を断ることはできないのです。
調査官には「質問検査権」という権利が与えられており、これに答えなかった際の罰則が規定されていることもあり、ほとんど強制みたいなものです。
いきなり押し掛けて来て、勝手に帳簿書類などの調査をするまでの権限は無いので、一応「今から調査を始めますが良いですか?」ぐらいの確認を取ったうえで行われるという点で「任意」と呼ばれているのです。
無予告調査が来たときはどう対応すれば良い?
「事前通知」があるのがほとんどですが、たまに予告なしの抜き打ち調査が行われることもあり「無予告調査」と呼ばれます。
無予告調査は、事前通知をすることで納税者が都合の悪いことを隠し、その場しのぎの取り繕いが行われる可能性が高いと判断した場合に、それを防ぐことを目的にしています。例えば現金商売の場合、事前通知をすることでその時だけ現金の調整をされてしまうと、税務調査に出向く意味が無くなってしまうからです。
無予告調査は抜き打ちで行われるといっても、調査官は行き当たりばったりで突然やってくるわけではありません。
例えば飲食店に無予告調査に入る場合、それまでに客を装って来店し、お店の繁盛具合や伝票・レジの使用状況といった現金の管理方法など、しっかりと内偵調査を行ったうえで満を持してやってきます。
また、現金商売に限らず、悪質なことをしていると税務署が見込んでいる場合は無予告調査が行われます。
無予告調査は抜き打ちで行われるため、日程調整も無くやってきます。
ただ、任意調査の1種であるため、勝手に調査を始めることはできません。
「大事な予定があるから今日は対応できない」などの正当な理由があれば、日程調整も可能です。
また「会社・店舗の中に入れない」のもポイントです。
税理士に連絡したい場合や、予定があって対応が難しい場合でも、会社の中に入 れてしまうとなし崩し的に税務調査が始まってしまう可能性があります。
経営者の皆さんは、突然やってきても慌てることなく冷静に対応し、すぐに税理士に相談しましょう。
税務調査で争いになりやすいポイント 事前通知を受けたら何を準備する?
税務調査でよく争点になるのは、「その支出が経費になるのかならないのか」です。経営者はできるだけ経費に入れたいし、調査官はできるだけ否認したいと考えています。
■交際費として計上されているものは本当に仕事上の付き合いなのか
■購入した車は本当に事業を行う上で必要なものなのか
この辺りは明確に示すことが難しい部分も多く、特に争点になりやすいところです。
「この食事は仕事上のものではないので経費にできません」
「この車は私物になるので経費にできません」
と調査官に言われても、事業上必要な支出である場合は、それをしっかりと主張しましょう。
このような指摘を受けた時に、「食事はいつ・誰と行ったのか」「車をいつ・どんな業務で使用したのか」といった記録をきちんと残しておけば、調査官に証拠として提出することができます。
事前通知があった場合は、このような記録や会計処理をするもととなった帳簿書類を提出できるように準備しておきましょう。
これらの記録をきちんと残していたのに、それでも疑ってくる場合は、それが経費にならないことを立証する責任はそもそも調査官側にあることを毅然とした態度で主張しましょう。
事前通知があったけど記録が全く残ってない!
もし、税務署から事前通知が来たのにこのような記録を残していなかった場合は、事業上必要な経費であったことを証明するためのできる限りの証拠集めをしましょう。
取引先からの請求書や、クレジットカードの支払い明細などは再発行が可能なケースもあるので、問い合わせてみると良いでしょう。
しかしながら、当然ですが嘘の記録は残さないでください。
調査官もプロなので、あらゆる資料や会社にあるメモなどから嘘を見抜き、経営者が思いもしなかったところから嘘が発覚することもあります。
取引先に対して、取引記録が正しいかどうかを確認する反面調査と呼ばれる調査が行われ、そこで嘘が発覚することもあります。
こうなるとこれは明らかな不正になりますので、重加算税が課されることになってしまいます。
また、領収書も全部捨ててしまい、請求書の再発行もできず何も打つ手が無くなってしまった方も諦めないでください。
事業を行っている以上、経費がゼロというのはあり得ません。事業上必要な支出であったことをしっかりと主張して、調査官に少しでも経費として認めてもらうよう交渉しましょう。
税務調査を受けるときに気をつけるポイント
税務調査では、調査官とのやりとりをいかに上手く行うことができるかによって、追徴税の額が大きく増減することがあります。
そのポイントをご紹介します。
調査官の言いなりにならない
まず気をつけるべきことは、「調査官の言いなりになってはいけない」ということです。調査官は追徴税を取ることをノルマにされており、時には強引に経費を否認して来るなど、何とかして追徴税を取ろうとしてくることもあります。
ここで、「調査官が言ってるからそうなんだ」と鵜吞みにせず、事業活動上必要経費であると主張できるものはしっかりと主張しましょう。
この主張がしっかりできるかどうかで、追加の税額が大きく変わります。
似たようなこともすでに書きましたが、大事なポイントなので繰り返しました!
感情的になってはいけない
「言いなりになってはいけない・しっかり主張するように」と先ほど述べたばかりですが、かといって感情的になってはいけません。
自分が調査官になったと仮定したとき、相手が感情的に反論してくると、自然にこちらも感情的になり、何としてでも税金を取ってやろうと思ってしまうはずです。調査官をそのような気持ちにさせないためにも、「冷静に・落ち着いて・しっかりと主張する」ことを心がけましょう。
余計なことを言わない
調査官からの質問には必ず意図があります。常に追及の糸口を探しています。
「趣味」などの税務調査とは全く関係無さそうなプライベートな質問でも、ペラペラと余計なことをしゃべってしまうと、そこから突っ込まれる可能性があります。
例えば、
「豪華な船を持っていて時間があれば釣りやレジャーを楽しんでいる」
「旅行が好きで、毎年必ず家族で海外旅行に行っている」
など、そこそこお金がかかる趣味をしゃべってしまったことで、所得に見合わないと不審に思われ、所得隠しが発覚してしまうようなケースもあります。
調査官からの質問には端的に、必要なことだけ答えるように注意しましょう。
あいまいなことを言わない
取引の記録が残っておらず、あまり記憶にも残っていないようなことを質問されたときは、あいまいな回答をしないように気をつけましょう。
何かを隠していると思われる可能性がありますし、それが不正と判断されて重加算税を課せられるような事態も招きかねません。
わからない場合はわからないとはっきり伝え、調べたうえで後日回答する旨を伝えましょう。
嘘をつかない
こちらも、嘘がバレると不正と判断されて重加算税を課せられる可能性があります。
それだけでなく、調査官からの信用を無くし必要以上に疑われたり、追及が厳しくなったりすることで、追徴税額が増えてしまうかもしれません。
調査官から触れてほしくない部分に対して質問されたとしても、嘘をつくことは絶対にやめましょう。
会社に置いてあるものにも要注意
調査官は、会社に置いてあるものにも目を光らせています。あまり利益がでていないはずなのに高価なものばかり置いていたり、事業と関係のないプライベートなものを置いていたりすると、調査官から疑われるきっかけになってしまうため気をつけましょう。
まとめ
■税務調査は基本的に、税務署から「事前通知」があったうえで行われます。事前通知において調査を行う日時等が伝えられますが、日程調整をすることは可能なので言いなりにならずにきちんと申し出るようにしましょう。
■まれに、事前通知なしで「無予告調査」が行われ、突然調査官たちが事務所にやってくることもありますが、この場合も調査官たちは勝手に調査を始めることはできません。正当な理由があれば日程調整も可能なので、こちらのケースでもきちんと申し出るようにしましょう。会社や店舗の中に入れないのもポイントです。
■事前通知を受けたら、経費として計上している支出が、事業上必要な支出であることが証明できる記録(帳簿、領収書、請求書など)を提出できるように用意しておきましょう。
■記録が全く残っていない場合は、可能であれば請求書の再発行を依頼するなど、できる限りの対策を取りましょう。嘘の記録を作ることはバレるのでやめましょう。
■調査中の対応にも気をつけるポイントがあります。対応の仕方次第で追加の税額は大きく変わることがあります。
■税務調査対策・調査対応時のポイントと、税理士にできることの記事でも税務調査対策や、調査対応時のポイントについてご紹介しているのでぜひご覧ください。
すでに顧問税理士がいれば税理士に相談して対策することができます。
顧問税理士がおらず、税に関する知識も無いため税務調査の対応に不安がある方は弊社までご相談ください。
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