慰謝料や営業損失補償は本当に非課税?
目次
立退料6,000万円が「ほぼ全額課税」された実例から学ぶ税金の落とし穴

「慰謝料なら税金はかからない」
「営業補償って言えば非課税になる」
こうした話をネットや知人から聞いたことがある人は多いと思います。
しかし結論から言うと、その理解はほぼ間違いです。
この記事では、
税法をまったく知らない人でも分かるように、
- なぜ慰謝料が非課税にならなかったのか
- なぜ営業損失補償が0円扱いされたのか
- なぜ「あとから内訳」を書いても意味がないのか
を、実際の立退料トラブルをもとに解説します。
そもそも税金は「もらったお金」にかかる

まず一番大事な前提から説明します。
税金の基本ルールはこれだけ
👉 お金をもらったら、原則すべて課税
「非課税」というのは例外中の例外です。
つまり考え方の順番は、
- 原則:課税
- 例外:特別に非課税
この順番を理解していないと、
慰謝料や補償金の話はすべて誤解します。
「慰謝料=非課税」は大きな勘違い

多くの人が、
「慰謝料と書いてあれば税金はかからない」
と思っています。
非課税になる慰謝料はごく一部だけ
税法で非課税になるのは、次のようなケースです。
- 交通事故でケガをした
- 医療ミスで後遺症が残った
- 災害で家や財産が壊れた
共通点はひとつ。
👉 事故・災害など、自分ではどうにもならない損害
こうした場合だけ、
「税金まで取るのは酷だよね」という考えで非課税になります。
「精神的につらかった」は非課税にならない

立退料の事例では、
「しつこい交渉で精神的につらかった」
という主張がありました。
しかし税法では、次のように考えます。
👉 精神的につらい、は誰でも言える
もしこれを非課税にしてしまうと、
- 取引終了
- 契約解除
- クレーム対応
- 退職
すべて「慰謝料」になってしまいます。
そのため税法は、
- 感情だけの話 → 課税
- 事故・災害レベル → 非課税
と、非常に厳しく線を引いています。
立退料は「一時所得」として課税される

では、立退料は何の税金になるのでしょうか。
立退料の正体は「臨時ボーナス」
税法上、立退料は多くの場合、
👉 一時所得
として扱われます。
一時所得とは、
- 継続的な仕事の報酬ではない
- たまたま一度にもらったお金
宝くじや懸賞金と近いイメージです。
営業損失補償が認められなかった理由

次に多い勘違いがこれです。
「20年続けた店の常連がいなくなる」
「信用がなくなる」
だから営業損失補償は非課税だ、という主張です。
税法は「お金を払って買ったもの」しか認めない
税法の考え方はとてもシンプルです。
👉 タダで作ったものは、0円のまま
- 常連客:いくらで買った? → 0円
- 信用・評判:帳簿に載ってる? → 載っていない
よって税法上は、
👉 失っても損失額は0円
という扱いになります。
「のれん」はなぜ資産にならないのか?

「のれんは資産じゃないの?」
と思う人もいるでしょう。
のれんが資産になるのは「買った場合だけ」
例えば、
- 会社を1億円で買う
- 実際の価値は8,000万円
- 差額2,000万円=のれん
この場合のみ、資産になります。
自分で育てた店・信用・ブランドは、
税法上は0円です。
あとから作った内訳は通用しない

この事例で決定的だったのが、
- 最初は「立退料6,000万円」
- あとから「慰謝料」「営業補償」と内訳を作成
という流れです。
税務署の判断は明確です。
👉 最初に合意していない内訳は無効
税金の世界では、
あと出しの理由付けは認められません。
結果:立退料6,000万円はどうなったか

最終的に、
- 立退料6,000万円
- 非課税部分なし
- 一時所得として課税
- 控除50万円後、半分が課税対象
さらに、
👉 過少申告加算税が追加されました。
節税のつもりが、
逆に税金が増えた典型例です。
まとめ|最低限これだけ覚えてください

最後に重要ポイントだけまとめます。
- 税金は「名前」ではなく「中身」で決まる
- 慰謝料が非課税なのは事故・災害レベルのみ
- 営業損失・信用・常連客は基本0円
- あとから作った内訳は意味がない
👉 自己判断が一番危険
少しでも迷ったら、
申告前に専門家へ相談することが最大の節税です。
国税不服審判所の事例等をわかりやすく先生と生徒の会話風でまとめた動画はこちらへ👇

この記事を書いた人

- 公認会計士・税理士
-
所属 公認会計士協会中国会 中国税理士会
公認会計士 第31637号
税理士 第128479号
1977年広島県呉市生まれ。会社が倒産した祖父と同業で起業した父の後ろ姿を見て育つ。青山学院大学経済学部卒業後、大手監査法人で幅広い業種の監査やコンサルティング業務を経験。その後、祖父及び父の経営していたような中小企業や個人事業主・フリーランスを助けるべく奮闘中。
日本全国の無申告・税務調査の対応件数は過去4年間で700件以上。IT/AIを駆使した業務効率化とサービス提供を行い、多くのお客様に最善のサポートを行っている。
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