税務署から無申告の手紙(お尋ね)が届いたら?無視するリスクと対処法

「確定申告をしていないのに、税務署から手紙が来た」
「何と答えればいいのか分からない」「すぐに税務調査になるの?」

突然の連絡に不安を感じても、まずは書類の内容と回答期限を確認してください。「お尋ね」が届いたことだけで、税務調査の開始や追加の税額が確定したとは限りません。

ただし、申告が必要なのに放置している場合は、回答とは別に申告・納税への対応が必要です。

この記事では、主に所得税の無申告について、届いた手紙の見分け方、税務署への連絡方法、無視するリスク、申告準備の進め方を解説します。

手紙が届いたら、まず行う4つのこと
  1. 書類名・対象年分・回答期限・担当部署を確認する
  2. 行政指導か税務調査かを確認し、対応予定を連絡する
  3. 資料を集め、申告の要否と対象年分を整理する
  4. 必要な回答・申告・納税を進め、控えを保存する

期限が迫っている場合は、すべての資料がそろうまで待たず、担当者へ状況を伝えましょう。

目次

税務署からの手紙は「お尋ね」「調査の通知」「督促状」で対応が違う

税務署からの郵便には、収入や申告状況を確認するもの、税務調査に関するもの、すでに納期限を過ぎた税金の納付を求めるものがあります。

封筒の色や書類のタイトルだけではなく、本文に何を求められているかを確認することが大切です。

※スマートフォンでは表を横にスクロールできます。

書類・連絡の例 主な内容 最初に確認すること
所得や申告状況についてのお尋ね・申告の案内 収入の内容や、申告していない理由などの確認 行政指導か調査か、対象年分、質問内容、回答期限
税務調査に関する通知・連絡 調査の実施、対象税目・期間、確認資料などの案内 担当者、調査対象、日時・場所、準備する資料
督促状・納付に関する催告 納期限を過ぎた税金の納付を求めるもの 税目、年分、未納額、納付状況、相談先

「お尋ね」は行政指導として送られる場合がある

所得や申告状況についての確認は、行政指導として行われる場合があります。行政指導は、納税者に自主的な確認や対応を求めるもので、税務調査とは区別されます。

ただし、「お尋ね」という名称だけで、必ず行政指導だと決めつけることはできません。国税庁は、調査または行政指導を行う際に、どちらに当たるかを明示する取扱いとしています。

書面で分からなければ、担当者に「今回の連絡は行政指導でしょうか。それとも税務調査でしょうか」と確認してください。

通常の税務調査と、強制調査は異なる

通常の税務調査は、納税者の理解と協力を得て行われます。「税務調査の通知が来た=捜索などを伴う強制調査」という意味ではありません。

一方で、税務職員には法律に基づく質問検査権があり、正当な理由なく帳簿の提示・提出を拒むなどの行為には、罰則が適用される場合があります。「任意だから自由に断ってよい」とも考えないようにしましょう。

また、調査の事前通知は電話などで行われることもあります。郵便が来ていない場合でも、すでに電話でどのような説明を受けたかを確認する必要があります。

不審な手紙は公式の連絡先から確認する

差出人や振込先などに不審な点がある場合は、国税庁の公式サイトで税務署の連絡先を調べ、送付の事実を確認してください。

手紙に記載された電話番号やQRコードだけを頼りにせず、確認が取れてから回答や支払いを進めましょう。

税務署から無申告の手紙が届いたときの対処法|4つのステップ

ステップ1.書類と封筒を保存し、回答期限を確認する

届いた書類は、封筒や同封物も含めて保管します。税理士へ相談する場合に備え、全ページを撮影・コピーしておくと共有しやすくなります。

  • 書類の名称と発行日
  • 対象となる年分・税目
  • 回答や提出を求められている内容
  • 回答期限・来署予定日など
  • 税務署名・担当部署・担当者名

回答期限は書類によって異なります。「お尋ねは何日以内に返せばよい」と一律には決められません。期限の記載がない場合も、そのままにせず担当者へ確認しましょう。

ステップ2.担当者へ連絡し、対応予定を伝える

質問の意味が分からない、資料がそろわない、期限までに回答できないといった場合は、その事情を担当者へ伝えます。

正確に分からない金額を、その場で推測して断定する必要はありません。分かっていることと、これから確認することを分けて説明しましょう。

電話で伝える内容の例

「○年分の所得税についてのお尋ねを受け取った○○です。今回のご連絡は、行政指導でしょうか、それとも税務調査でしょうか。

現在、売上や経費の資料を確認しています。記載の期限までに確認が終わらない可能性があるため、回答方法と今後の対応日程について相談させてください。」

税理士に依頼済みであれば、その事実や今後の連絡方法も伝えます。まだ依頼していない場合は、「依頼済み」とは伝えず、現在の状況を正確に説明してください。

お尋ねの回答期限と、確定申告・納税の法定期限は別です。
回答日程を相談できても、すでに過ぎた申告期限や納期限が自動的に延長されるわけではありません。

ステップ3.申告状況と資料を整理する

手紙に記載された年分について、申告書を提出しているか、どのような収入があったかを確認します。申告済みなら、申告書の控えやe-Taxの受信通知を探してください。

未申告の場合は、売上・経費・他の所得・所得控除などを確認し、申告義務があるかを判断します。収入があったという事実だけで、必ず所得税の確定申告が必要になるとは限りません。

ただし、所得税の確定申告が不要でも、住民税の申告などが必要になる場合があります。不明な点は税務署や税理士、市区町村の担当窓口に確認しましょう。

複数年にわたって申告していない場合は、手紙に書かれた年分だけでなく、他の年分や消費税などの申告漏れがないかも整理してください。

ステップ4.回答・申告・納税を進める

回答書には、確認できた事実を記載します。資料の確認中であれば、その状況と回答予定について担当者と相談し、根拠のない数字で埋めないようにしましょう。

お尋ねへの回答と、確定申告書の提出は別の手続きです。申告義務がある場合は、回答書を返送しただけで対応が終わるわけではありません。

期限後申告書を作成・提出し、納付も進めます。所得税の期限後申告は、原則として申告書を提出した日が納期限です。一括納付が難しい場合は、提出前から納付について相談してください。

回答書・申告書・添付資料の控えを保存し、電話した日時や担当者名、話した内容も記録しておきましょう。

税務署からの手紙を無視するとどうなる?

再度の連絡や税務調査につながる可能性がある

行政指導としてのお尋ねに回答しなかったことだけで、直ちに追加の税金や差押えが決まるわけではありません。

ただし、収入や申告状況についての疑問が解消されなければ、税務署から再度連絡を受けたり、税務調査につながったりする可能性があります。

申告が不要な事情や、すでに申告している事実がある場合も、無視するより資料に基づいて説明する方が、状況の確認を進めやすくなります。

申告・納付が遅れると負担が増えることがある

申告義務があるのに放置すると、本来の税金に加えて無申告加算税や延滞税が発生することがあります。調査の進み具合や申告時点によって、加算税の取扱いが変わる場合もあります。

税理士に相談したり、税務署へ「準備中です」と伝えたりしただけで、加算税の税率が確保されるわけではありません。必要な申告と納付を実際に進めることが大切です。

税額が確定した後も滞納すれば、差押えの可能性がある

お尋ねを無視したことと、確定した税金を滞納することは分けて考える必要があります。

申告がない場合、税務署が調査に基づいて所得や税額を「決定」することがあります。その後も納付せず、督促を受けても滞納が続くなど、法律上の要件を満たすと財産の差押えにつながる可能性があります。

税務署からの電話や訪問が何度も行われるまで、差押えはないと考えるのは危険です。督促状や納付の催告が届いている場合は、未納額と納付状況を確認し、早急に担当部署へ相談してください。

お尋ねが来た後でも、無申告加算税は5%になる?

行政指導としてのお尋ねを受けた後でも、自主的な期限後申告として原則5%の取扱いになる場合があります。手紙を受け取っただけで、必ず高い税率に切り替わるわけではありません。

ただし、すでに調査の通知を受けているか、調査による決定を予知した後かなどによって取扱いが異なります。「お尋ねと書いてあるから必ず5%」とも判断できません。

申告するタイミングによる基本税率

令和5年分以降の所得税における無申告加算税の基本的な税率は、次のとおりです。

申告のタイミング 納付税額50万円までの部分 50万円超~300万円までの部分 300万円を超える部分
調査の事前通知前に自主的に申告 5% 5% 5%
事前通知後、調査による決定を予知する前に申告 10% 15% 25%
調査による決定を予知した後に申告、または税務署が決定 15% 20% 30%

※税率をかける対象は売上や所得ではなく、納付すべき税額です。上記は基本税率であり、繰り返しの無申告や帳簿の不提示などによる加重措置、一定の要件を満たす場合の不適用があります。令和4年分以前の所得税は一部の税率が異なります。

延滞税なども確認する

延滞税は、納付が遅れた期間などに応じて計算されます。適用割合は年や期間の区分によって異なるため、古い記事に書かれた年率をそのまま使わないようにしましょう。

また、隠ぺい・仮装などの事情がある場合は、無申告加算税に代えて重加算税が課されることがあります。単に手紙に返事をしなかったという事情だけで、一律に重加算税になるわけではありません。

なぜ税務署から手紙が来た?収入が把握される主なきっかけ

税務署は、提出された資料や取引先への調査などから、収入や申告状況を確認しています。ただし、手紙が来た理由や税務署が把握している範囲は、個別の状況によって異なります。

支払調書・源泉徴収票などの資料

報酬や給与の支払者は、法令で定められた提出範囲に該当する場合、支払調書や源泉徴収票などを税務署へ提出します。これらが、収入や申告状況を確認する資料になることがあります。

すべての業務委託報酬について、一律に支払調書の提出義務があるわけではありません。報酬の種類や金額などによって提出範囲が異なります。

取引先への調査や取引記録

取引先への税務調査などで、請求書や帳簿、振込記録を確認したことが、収入の把握につながる場合があります。

自分の手元に領収書や帳簿がなくても、取引先や金融機関などに記録が残っていることがあります。

インターネット取引などに関する資料情報

ネット販売や副業などについても、取引に関する資料情報が申告状況を確認するきっかけになる場合があります。

ただし、入金や売却代金があるだけで、すべてが課税対象の所得になるとは限りません。取引の内容、売上、必要経費などを分けて確認する必要があります。

期限後申告に向けて準備する資料と進め方

売上・経費・所得控除の資料を年分ごとに集める

税務署から届いた書類とあわせて、次の資料を確認しましょう。

  • 売上の請求書・支払明細・取引履歴
  • 銀行口座の通帳・入出金明細
  • クレジットカードの利用明細
  • 経費の領収書・レシート・契約書
  • 給与の源泉徴収票など、他の所得に関する資料
  • 社会保険料の支払額が分かる資料・各種控除証明書
  • 過去の申告書や、青色申告・消費税に関する届出書

領収書が見つからない場合でも、取引先への再発行依頼、銀行明細、購入履歴などで確認できることがあります。ただし、資料がない支出を根拠なく経費に計上することは避けてください。

自分で申告する場合は、対象年分に対応した書類を作る

売上や経費を整理したうえで、対象年分に対応する国税庁の確定申告書等作成コーナーや申告書の様式を使って作成します。

過去分の申告には、その年分の税制や様式を使います。現在の年分の申告書に、過去の数字を入れて提出しないようにしてください。

作成後は、対応する電子申告、郵送、窓口への提出などで手続きを進めます。申告書の提出とは別に、納税の手続きも必要です。

納税資金が足りない場合は、申告準備と並行して相談する

一括で税金を払えない場合でも、連絡や申告を放置しないことが大切です。収入・支出・財産の状況などを整理し、税務署の納税担当へ相談してください。

要件を満たす場合には、換価の猶予や納税の猶予などを利用できる可能性があります。税理士に依頼する場合は、納税の相談や申請支援が依頼範囲に含まれるかも確認しましょう。

税理士への相談を検討したいケース

次のような場合は、書面への回答や申告書作成を一人で抱え込まず、税理士に相談することを検討してください。

  • 税務調査の連絡を受けている
  • 何年も申告しておらず、対象年分が分からない
  • 領収書や帳簿が不足し、売上・経費を整理できない
  • 副業や不動産収入など、複数の所得がある
  • 消費税の申告が必要か分からない
  • 回答期限が迫っており、作業の見通しが立たない

相談時は、手紙の全ページと封筒、過去の税務署とのやり取り、現在の資料の状態を共有しましょう。自分で回答・提出した書類があれば、その控えも渡してください。

税理士に依頼できる範囲は、資料整理、帳簿・申告書の作成、税務署との連絡、調査の立ち会いなどです。どこまで含まれるかは契約によって異なります。

費用は、申告年数、取引量、資料の状態、消費税申告や調査対応の有無などで変わります。申告料だけでなく、追加費用も含めた見積もりを確認してください。

税務署からの手紙と無申告に関するよくある質問

Q.お尋ねの回答期限を過ぎてしまいました。どうすればよいですか?

気づいた時点で担当者に連絡し、回答できていない事情と現在の確認状況を伝えてください。そのうえで、回答方法や提出予定を相談しましょう。

期限を過ぎたからといって、そのままにしてよいわけではありません。申告義務がある場合は、申告の準備も並行して進めます。

Q.お尋ねに回答すれば、確定申告は不要ですか?

回答書は確定申告書の代わりにはなりません。申告義務がある場合は、別途、期限後申告が必要です。

一方、確認の結果、申告義務がない場合は、その理由や根拠を担当者に説明してください。「手紙が来たから必ず申告が必要」と一律に決まるわけではありません。

Q.すでに申告したのに手紙が届いた場合は?

申告した年分や提出先、提出日を確認し、申告書の控えやe-Taxの受信通知などを準備して担当者へ連絡してください。

確認が取れないまま同じ申告書を再提出するのではなく、何について回答を求められているのかを確認しましょう。

Q.何年も前の無申告について、どこまで申告する必要がありますか?

税務署が更正・決定できる期間は原則5年で、偽りその他不正の行為がある場合は7年となるなどの規定があります。ただし、課税処分の期間と、確定した税金の徴収権の時効は別の制度です。

「5年たてば必ず払わなくてよい」「手紙に書かれた年分だけ申告すればよい」と自己判断せず、各年の申告状況や過去の手続きも含めて確認してください。

Q.税理士を探している間、税務署への連絡は待った方がよいですか?

回答期限が迫っている場合は、相談先が決まるまで放置せず、担当者に現在の状況を伝えてください。

「税理士への相談を検討しており、資料を確認中です」といった事実を伝え、回答予定を相談します。依頼先が決まったら、税理士と連絡方法を調整しましょう。

税務署からの手紙は、内容と期限を確認して早めに対応を

税務署からお尋ねが届いても、すぐに税務調査や差押えが決まるわけではありません。まずは行政指導・調査・納付の催告のどれに当たるかを確認し、求められている対応を整理しましょう。

資料がそろっていない場合も、回答期限まで何もせず待つ必要はありません。担当者へ状況を伝え、必要な回答・申告・納税を進めることが大切です。

複数年の無申告や税務調査への対応に不安がある方は、届いた手紙を手元に用意して、税理士に相談してください。

税務署から手紙が届いた。
その不安、一人で抱えず相談を。

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この記事を書いた人

武信 隼人(たけのぶ はやと)
武信 隼人(たけのぶ はやと)公認会計士・税理士
所属 公認会計士協会中国会 中国税理士会
公認会計士  第31637号
税理士 第128479号

1977年広島県呉市生まれ。会社が倒産した祖父と同業で起業した父の後ろ姿を見て育つ。青山学院大学経済学部卒業後、大手監査法人で幅広い業種の監査やコンサルティング業務を経験。その後、祖父及び父の経営していたような中小企業や個人事業主・フリーランスを助けるべく奮闘中。
日本全国の無申告・税務調査の対応件数は過去4年間で700件以上。IT/AIを駆使した業務効率化とサービス提供を行い、多くのお客様に最善のサポートを行っている。

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