無申告は会計ソフトだけで解決できる?自分で申告・税理士依頼を比較

「何年も確定申告をしていないけれど、会計ソフトを使えば自分で申告できる?」
「税理士に頼む費用を抑えたい。でも、入力を間違えないか不安……」

会計ソフトを使って、自分で期限後申告を進めることは可能です。ただし、ソフトを契約して明細を取り込むだけで、過去の無申告がすべて解決するわけではありません。

申告する年分の確認、売上・経費の整理、消費税の申告義務の判断、申告書の提出と納税まで行う必要があります。

この記事では、主に個人事業主・フリーランスの方に向けて、会計ソフトでできること、自分で申告する場合の手順、税理士への相談を検討したいケースを解説します。

目次

無申告は会計ソフトだけで解決できる?まず知っておきたいこと

会計ソフトは、取引の記録や集計、決算書・申告書の作成を助ける道具です。資料がそろっていて、必要な処理を理解できる場合は、自分で申告を進める選択肢になります。

一方、入力した内容が税務上正しいか、申告が必要な年分や税目に漏れがないかまで、すべて自動で保証されるわけではありません。

作業 会計ソフトで補助できること 自分で確認・判断すること
取引の入力 銀行・カード明細の取り込み、仕訳候補の提案 事業の取引か、重複や漏れがないか
売上・経費の集計 登録した取引の集計、帳簿の作成 現金売上や未入金の売上を含めた計上内容
決算・申告書の作成 対応している年分・帳票の計算と作成 必要な決算整理や控除の適用要件
申告書の提出 対応する電子申告や書類出力 提出の完了、添付書類、対象年分の一致
納税・税務署対応 対応機能の範囲で納付情報などを確認 実際の納付、加算税・延滞税、税務署への説明

※スマートフォンでは表を横にスクロールできます。利用できる機能は製品・プラン・年分によって異なります。

法人は、会計ソフトで決算書を作るだけでは申告が完了しません。
法人税・地方税などの申告書作成には、別の申告ソフトやサービスが必要になる場合があります。この記事で紹介する個人向けの確定申告機能とは分けて確認してください。

自分で申告する場合と税理士に依頼する場合を比較

選ぶ際は、費用だけでなく、資料の状態、判断が必要な取引の多さ、作業に使える時間を比較しましょう。

比較項目 会計ソフトで自分で申告 税理士に依頼
費用 主にソフト利用料。資料の取得費用などが別途かかる場合もある 申告料・記帳代行料など。年数や作業範囲によって変わる
作業時間 操作の習得、入力、確認、提出を自分で行う 依頼範囲に応じて作業を任せられる。資料提出や内容確認は必要
税務上の判断 自分で調べ、不明点は税務署などに確認する 資料や事情を伝えて、具体的な判断を相談できる
資料不足への対応 代替資料の収集と内容の整理を自分で行う 必要な資料や、取引を確認する方法を相談できる
税務署からの連絡 原則として自分で対応する 税務代理の依頼範囲に応じて対応を任せられる

「入力は自分で行い、申告前の確認や申告書作成を税理士に依頼する」という方法もあります。ただし、確認のみの依頼を受けるか、どのソフトに対応するかは事務所によって異なります。

自分で入力したデータでも、修正が多ければ追加作業が必要です。作業を始める前に相談すると、入力方法のやり直しを減らせる場合があります。

会計ソフトを使っても、期限後申告のペナルティはなくならない

会計ソフトを使った申告でも、申告期限を過ぎていれば期限後申告として扱われます。正しく入力して提出しても、無申告加算税や延滞税が免除されるとは限りません。

無申告加算税は申告するタイミングで変わる

所得税では、調査の事前通知前に自主的に期限後申告をした場合、無申告加算税は原則5%です。事前通知後も、調査による決定を予知する前か後かで税率が異なります。

令和5年分以降の所得税における基本的な税率は、次のとおりです。

申告のタイミング 納付税額50万円までの部分 50万円超~300万円までの部分 300万円を超える部分
調査の事前通知前に自主申告 5% 5% 5%
事前通知後、調査による決定を予知する前に申告 10% 15% 25%
調査による決定を予知した後に申告、または税務署が決定 15% 20% 30%

※上記は基本税率です。繰り返しの無申告や帳簿の不提示などによる加重措置、一定の要件を満たす場合の不適用があります。令和4年分以前の所得税は一部の税率が異なります。

また、納付が遅れた期間などに応じて延滞税が生じます。ソフト選びや入力作業に時間をかけすぎて申告・納付が遅れないよう、作業の見通しを立てることが大切です。

期限後申告では55万円・65万円の青色申告特別控除を使えない

e-Taxで提出しても、期限後申告では55万円・65万円の青色申告特別控除は適用できません。これらの控除には期限内申告の要件があるためです。

青色申告の承認状況などによっては、10万円の控除を検討できる場合があります。ソフトの設定を65万円控除のままにせず、その年分で適用できる金額を確認しましょう。

なお、個人事業主について「2年連続で期限後申告になれば必ず青色申告が取り消される」とする説明は適切ではありません。法人の取扱いと混同せず、帳簿の備付け・保存や取引の記録状況などを確認する必要があります。

無申告の解消に使う会計ソフトを選ぶ3つの条件

条件1.申告したい年分の入力・書類作成・提出に対応しているか

最初に確認したいのは、料金や知名度よりも「申告したい年分を扱えるか」です。

過去の帳簿を閲覧できても、その年分の取引を新しく入力できるとは限りません。また、申告書のPDFを出力できることと、その年分を電子申告できることも別です。

契約前に確認する項目
  • 申告したい各年分の取引を入力・修正できるか
  • その年分の税制に対応した申告書を作成できるか
  • 青色申告決算書・収支内訳書など必要な書類に対応するか
  • 電子申告または印刷提出ができるか
  • 消費税申告などに別の契約や上位プランが必要か

申告書作成に対応していない年分は、帳簿の集計結果をもとに、国税庁の対応する作成画面やその年分の様式を使う方法もあります。現在の年分の申告書に過去の数字を入れて提出することは避けてください。

条件2.手元の資料を取り込めるか

銀行口座やクレジットカードとの連携は入力負担を減らせますが、過去の全期間を取得できるとは限りません。取得できる期間は、金融機関・サービス・連携方式などによって異なります。

自動連携で取得できない場合に、CSVの取り込みや手入力に対応できるかも確認しましょう。金融機関から取引履歴を取り寄せる必要があるケースもあります。

また、現金売上や現金払いの経費は、銀行明細を連携するだけでは反映されません。手元の資料に合った入力方法を選ぶことが必要です。

条件3.入力結果を確認しやすく、必要なサポートを受けられるか

初心者向けの操作画面や自動仕訳は便利ですが、提案された科目をそのまま確定してよいとは限りません。

例えば、借入金の入金を売上として登録したり、私的な買い物を経費として登録したりすると、申告内容が誤ってしまいます。入力後に取引一覧や残高を確認しやすいかも重要です。

操作サポートの方法や範囲はプランごとに異なります。電話・チャットなどの対応範囲を確認し、個別の税務判断をどこに相談するかも決めておきましょう。

主要3ソフトを比較|過去分の対応範囲に注意

同じクラウド会計ソフトでも、過去分の扱いは異なります。ここでは、各社の公式案内をもとに、無申告の解消で確認したい点を比較します。

製品情報は2026年10月確認時点です。契約時には、対象年分・プラン・提出方法について最新の公式案内をご確認ください。

ソフト 公式案内で確認できる過去分の取扱い 無申告の方が確認したい点
freee会計 年度を切り替えて過年度分の申告書等を出力する機能がある 希望する年分の新規作成・編集・電子申告ができるかを個別に確認
マネーフォワード クラウド確定申告 2020年分以降の確定申告書は、年度を切り替えて作成可能 対象年分で必要な帳票や電子申告方法まで対応するかを確認
やよいの青色申告 オンライン 原則として当年・前年の2年分の取引入力、インポート、申告書作成に対応 数年前からの無申告を、オンライン版だけでまとめて処理できるとは限らない

freee会計|過年度分の出力と対象年分の作成可否を確認する

freee会計の公式ヘルプでは、年度を切り替えて過年度分の確定申告書類を出力できることが案内されています。

ただし、過去分の出力機能があることだけで、希望するすべての年分を新規作成・電子申告できると判断しないようにしましょう。利用開始年度や対象年分、契約プランを伝えて確認するのが確実です。

なお、「2017年3月期以降」という案内は、freee申告の法人税申告書に関するものです。個人の所得税申告の対応範囲として使うことはできません。

マネーフォワード クラウド確定申告|2020年分以降の申告書作成に対応

公式サポートでは、2020年分以降の確定申告書を、年度を切り替えて作成できると案内されています。

複数年分を整理する際の候補になりますが、必要な所得の種類や帳票、提出方法まで対応しているかを確認してください。対応していない帳票は、別の方法で作成する必要があります。

やよいの青色申告 オンライン|数年分の遡り申告では制限に注意

公式サポートでは、やよいの青色申告 オンライン・やよいの白色申告 オンラインの取引入力や申告書作成は、原則として当年と前年の2年分とされています。

契約時期などによって前々年の入力が可能な場合もありますが、最新版の申告書がリリースされると利用できなくなる旨の注意書きがあります。

数年分の無申告がある方は、「弥生なら過去分もすべて対応できる」と考えて契約しないことが大切です。オンライン版とデスクトップ版も別製品のため、製品名を含めて確認しましょう。

会計ソフトを使って期限後申告を進める5ステップ

ステップ1.申告する年分・税目を確認し、資料を集める

まず、事業を始めた時期、申告済みの年分、申告していない年分を整理します。所得税のほかに消費税などの申告が必要かも確認してください。

申告する範囲を、ソフトが対応している年数だけで決めてはいけません。「無申告は一律に直近5年分だけ申告すればよい」とも限らないため、古い年分の扱いに迷う場合は税務署や税理士に確認しましょう。

資料は、年分ごとに分けて集めると作業しやすくなります。

  • 通帳・銀行の入出金明細
  • カード利用明細・領収書・レシート
  • 売上の請求書・支払明細・決済サービスの履歴
  • 給与の源泉徴収票など、事業以外の所得に関する資料
  • 社会保険料の支払額が分かる資料・各種控除証明書
  • 過去の申告書・青色申告や消費税に関する届出書

ステップ2.対象年分と申告方法を設定する

対応範囲を確認したソフトで、事業情報、会計期間、青色・白色の区分、消費税の設定などを行います。

個人の所得税は1月1日から12月31日までの所得を年分ごとに計算します。年の途中で開業した場合は、実際の開業時期や開業前の支出も確認します。

青色申告は、ソフトで選択するだけでは適用されません。その年分について承認を受けているかを確認し、期限後申告に合った控除額を設定してください。

複数年分を処理する場合は、原則として古い年分から順に整理します。翌年に引き継ぐ預金残高や固定資産などがあるためです。

ステップ3.取引を入力し、重複と漏れを確認する

自動連携、CSVの取り込み、手入力を組み合わせて取引を登録します。自動で取得できなかった期間は、通帳や取り寄せた履歴などで補います。

特に、次の点は確認しておきましょう。

  • 銀行からの借入れや自分の口座間の移動を、売上にしていないか
  • カード利用時と銀行引き落とし時に、同じ経費を二重計上していないか
  • 現金で受け取った売上を入力し忘れていないか
  • 売上から差し引かれた手数料や源泉所得税を適切に処理しているか
  • 年末時点の未入金の売上や未払いの経費を確認したか

銀行の入金額をすべて売上、出金額をすべて経費として登録すると、正しい所得にならない場合があります。

ステップ4.決算整理と控除の確認をして申告書を作成する

取引入力の後は、棚卸し、減価償却、家事按分、売掛金・買掛金などを確認します。

高額な設備や備品は、購入時に全額を経費にするのではなく、減価償却が必要になることがあります。ただし、一括償却資産や少額資産の特例などもあるため、取得額だけで一律に判断せず、取得時期やその年分の要件を確認してください。

自宅兼事務所の家賃や通信費などは、使用面積や利用時間といった合理的な根拠で事業分を計算します。ソフトが計算してくれても、事業割合の根拠は自分で整理する必要があります。

さらに、給与などの他の所得、源泉徴収された税額、所得控除を入力し、各年分の申告書を作成します。過去分には、過去のその年分に適用される制度を使います。

ステップ5.申告書を提出し、納付と保存まで行う

対象年分、所得、控除、税額を確認し、対応する方法で提出します。電子申告の場合は、ソフトの送信操作だけで終えず、受付結果も確認してください。

e-Taxはメンテナンス時間などを除いて利用できますが、ソフト側の利用条件や対象年分の送信対応も確認する必要があります。マイナンバーカードや対応スマートフォンなど、選択した提出方法に必要な機器も準備しましょう。

所得税の期限後申告では、原則として申告書を提出した日が納期限です。申告前から納税資金を確認し、納付手続きまで進めてください。

一括納付が難しい場合は、税務署に早めに相談し、猶予制度などの利用可否を確認します。希望する分割払いが必ず認められるわけではありません。

申告書の控え、電子申告の受信通知、帳簿、領収書などは保存します。ソフトを解約する場合も、必要なデータを取り出しておきましょう。

税理士に相談した方がよい5つのケース

1.資料が不足していて、売上や経費を再現できない

会計ソフトは、存在しない資料を自動で補ってくれるものではありません。売上の一部が不明、現金取引が多い、入金の内容が分からないといった場合は、先に整理方法を相談しましょう。

領収書がなくても、通帳や取引先の明細などから確認できることがあります。ただし、根拠のない経費を入力してよいわけではありません。

2.消費税の申告義務や計算方法が分からない

個人事業主は、原則として前々年の課税売上高が1,000万円を超えると、消費税の納税義務が生じます。ただし、前年の上半期に関する判定やインボイス登録など、別の理由で課税事業者となる場合もあります。

「今年の売上が1,000万円以下だから消費税申告は不要」とは限りません。登録日や届出の状況、年分ごとの課税区分を確認してからソフトを設定してください。

3.複数年分の処理があり、作業の見通しが立たない

年数が増えるほど、資料の収集や残高の確認に時間がかかります。車・設備・在庫・借入金などがあると、年をまたぐ処理も必要です。

「何か月も入力しているのに終わらない」「毎年の残高が合わない」という場合は、途中のデータも含めて相談しましょう。無申告の年数だけで悪質性が決まるわけではありませんが、対応を先延ばしにしないことが大切です。

4.税務署から連絡が来ている

税務署からのお尋ねと、税務調査の事前通知は、同じものではありません。連絡が来たという事実だけで、加算税の取扱いを決めつけないようにしてください。

届いた書面や電話の内容、連絡日時、回答期限を整理し、税理士に伝えましょう。事前通知後であっても、調査の進み具合によって取扱いが異なるため、通知を受けたら放置せず対応することが必要です。

5.申告内容の正しさを自分で確認できない

入力が終わっていても、売上の計上時期、家事按分、減価償却、青色申告の適用などに不安がある場合は、提出前に確認することをおすすめします。

会計ソフトを使っていること自体が、税務調査で説明できる根拠になるわけではありません。取引の内容を資料とともに説明できる状態にしておくことが大切です。

無申告と会計ソフトに関するよくある質問

Q.会計ソフトを使えば、何年前まで申告できますか?

ソフトが扱える年分は製品によって異なります。また、ソフトの対応年分と、税務上どの年分を申告する必要があるかは別の問題です。

まず申告が必要な年分を確認し、それに対応するソフトや作成方法を選んでください。対応外の年分を省略してよいわけではありません。

Q.会計ソフトを買わずに期限後申告することはできますか?

可能です。売上や経費を正しく整理したうえで、対象年分に対応する国税庁の確定申告書等作成コーナーや申告書の様式を使う方法があります。

ただし、会計ソフトを使わない場合でも、必要な記帳や書類の保存は行わなければなりません。取引件数が多い場合は、集計や確認の負担も考えて選びましょう。

Q.無申告加算税や延滞税もソフトで計算できますか?

所得税などの本税を計算できても、無申告加算税・延滞税まで自動で確定するとは限りません。機能の有無に加え、税率の適用条件や納付日などの確認が必要です。

無申告加算税は原則として税務署の賦課決定によります。延滞税は納付日などに応じて計算されるため、納付方法や金額が分からない場合は税務署に確認してください。本税の納付を通知待ちで遅らせないようにしましょう。

Q.途中までソフトに入力したデータを税理士に引き継げますか?

対応するソフトやデータ形式であれば、引き継げる場合があります。共有機能を利用するか、仕訳データなどを出力して渡すかは、依頼先に確認してください。

入力済みのデータにも確認や修正が必要になるため、「入力した分だけ必ず料金が安くなる」とは限りません。

Q.申告書を提出すれば、税務調査の心配はなくなりますか?

期限後申告をしても、税務調査が免除されるわけではありません。申告内容について、後日確認を受ける場合があります。

売上や経費の根拠となる資料、計算の過程、申告書の控えなどを保存し、説明できるようにしておきましょう。

会計ソフト選びの前に、申告する年分と資料の状態を確認しよう

会計ソフトは、無申告を解消するための入力・集計・書類作成に役立ちます。ただし、過去分の対応範囲や税務上の判断には、自分で確認しなければならない部分があります。

資料がそろい、必要な処理を理解できるなら自分で申告する方法もあります。資料不足や複数年の処理、消費税、税務署対応に不安がある場合は、早い段階で税理士に相談しましょう。

何年も申告していない。
その不安、まずは相談から。

資料が足りない方も、税務署から連絡が来た方も。

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この記事を書いた人

武信 隼人(たけのぶ はやと)
武信 隼人(たけのぶ はやと)公認会計士・税理士
所属 公認会計士協会中国会 中国税理士会
公認会計士  第31637号
税理士 第128479号

1977年広島県呉市生まれ。会社が倒産した祖父と同業で起業した父の後ろ姿を見て育つ。青山学院大学経済学部卒業後、大手監査法人で幅広い業種の監査やコンサルティング業務を経験。その後、祖父及び父の経営していたような中小企業や個人事業主・フリーランスを助けるべく奮闘中。
日本全国の無申告・税務調査の対応件数は過去4年間で700件以上。IT/AIを駆使した業務効率化とサービス提供を行い、多くのお客様に最善のサポートを行っている。

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