税務調査で修正申告が必要に。どんなペナルティを受ける?
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税務調査で修正申告が必要に。どんなペナルティを受ける?
日本では、納税者自らが税額を計算・申告して税金を納める「申告納税方式」がとられています。
「税務調査」とは、この申告が正しく行われ、税金が正しく納められているかどうかを確認するために行われる調査のことです。
調査官がいきなりやって来てドラマのような捜査が行われるというイメージを持っている方も多いかもしれませんが、実際にそのような捜査が行われることは滅多にありません。
税務調査の流れ
個人事業主の場合は通常1~2日、中小法人の場合でもだいたい2~3日で終わるのが一般的です。
初日は、まず事業に関する説明を求められ、現金のチェック、帳簿や領収書などの書類のチェックへ進んでいきます。そして、調査で挙がった疑問点や指摘事項の指摘を受けて1日目が終わります。
2日目に、1日目に指摘を受けた事項に対する交渉が行われたり、その他調査官が必要と判断した調査が行われたりします。
そして、最終的にまとめられた指摘事項が伝えられ、納得すれば追徴税額が決定するという流れになります。
どんな調査が行われるのか、ほんの一部ですがご紹介します。
帳簿調査
売上や仕入・現金の管理状況など、事業活動に関する様々な事項について帳簿書類を基に調査を行います。売上除外や経費の架空計上などの不正が行われていないかどうかチェックされます。
また、帳簿書類だけでは不正の発見が難しいことが多いため、業務の中で使用されている記録やメモといった原始記録と呼ばれるものまでチェックされることもあります。
反面調査
調査に協力しなかったり、必要な帳簿書類が保存されていなかったりといった場合に、取引先等を調べることで適切な処理が行われているかどうかを確認します。
基本的にはこの反面調査を拒否することはできません。
取引先にも迷惑がかかるうえに、もし不正が発覚すると、信用を失い取引停止といった事態に陥る場合もあります。
税務調査は何年分さかのぼって調査されるのか
税務調査は、通常は3年(無申告の場合は通常5年)、問題が見つかった場合には5年、偽りその他不正の行為が見つかった場合は7年間さかのぼって調査されることになります。
偽りその他不正の行為とは、「売上の一部を除外して所得を過少に申告した」「経費を架空計上した」といった不正行為の中でも、金額が大きい・税金の徴収を著しく困難にする工作を伴うなど極めて悪質であると判断された場合に該当します。
税務調査によるペナルティ
税務調査が入り、追徴課税が行われることになると、状況に応じて「無申告加算税」「過少申告加算税」「不納付加算税」「重加算税」「延滞税」といったペナルティが課されることとなります。
以下、それぞれについてご紹介したいと思います。
無申告加算税
申告期限内に、確定申告をしなかった場合に加算されます。
新たに納めることとなった税金の5~20%が加算されることになります。
5~20%と幅があるのは、以下のように場合分けされています。
①税務署から事前通知が来る前に自主的に申告した場合は5%
②調査の事前通知があった後、実際に調査を受けるまでに申告した場合は、「50万円までは10%、50万円を超える部分に対して15%」が加算されます。
③実際に調査を受けた後で申告したり、所得金額の決定を受けたりした場合は「50万円までは15%、50万円を超える部分に対して20%」が加算されます。
※過去5年以内に同じ税目に対して無申告加算税を課されたことのある場合は、さらに10%が上乗せされることになります。
過少申告加算税
納めた税金が、本来納めるべきであった金額より少なかった場合に加算されます。
新たに納めることとなった税金の5~15%が加算されることになります。
税務署から事前通知が来る前に自主的に修正申告した場合は、過少申告加算税はかかりません。
5~15%と幅があるのは、以下のように場合分けされています。
①調査の事前通知があった後、実際に調査を受けるまでに修正申告した場合は、「50万円までは5%、期限内申告税額と50万円のいずれか多い金額を超える部分に対して10%」が加算されます。
②実際に調査を受けた後で修正申告したり、税務署からの更生を受けたりした場合は、「50万円までは10%、期限内申告税額と50万円のいずれか多い金額を超える部分に対して15%」が加算されます。
不納付加算税
源泉徴収した所得税を、正当な理由なく納付期限内に支払わなかった場合に加算されます。基本的には10%の加算となりますが、税務署から事前通知が来る前に自主的に納付した場合は5%となります。
重加算税
過少申告加算税・無申告加算税・不納付加算税が加算される場合で、それらが「仮装や隠ぺい」により行われたものであるとされた場合に、それぞれの加算に代わって以下の割合で課税されます。
①無申告加算税に代わって、40%の加算
②過少申告加算税に代わって、35%の加算
③不納付加算税に代わって、35%の加算
※過去5年以内に同じ税目に対して無申告加算税または重加算税を課されたことがある場合は、さらに10%が上乗せされることになります。
※令和3年度の税制改正により、仮装・隠ぺいによる不正が電子データに関連して見つかった場合には、さらに10%が上乗せされることとなりました。
仮装・隠ぺいとは
重加算税が加算される要件である「仮装・隠ぺい」について、一般的に挙げられる例として
■いわゆる二重帳簿を作成している
■帳簿書類を破棄または隠匿している
■帳簿書類を改ざんしている
■売上をごまかしている
■簿外資金をもって役員賞与その他の費用を支出している
■経費を架空計上している
といったものがあります。
簡単に言うと、税金を安く抑えるためにあれこれ操作して申告しているということです。
先ほど挙げたのはあくまでも例示のため、他にも様々なケースが考えられます。
重加算税が課されることになると、多額のペナルティを支払うことになってしまいます。ただ、調査官から重加算税を指摘されても、回避できる可能性もあります。
税務調査で重加算税の指摘を受けた!重加算税は回避できるのか?という記事で詳しくご紹介します。ぜひご覧ください。
延滞税
納期限に遅れて納付した場合、納期限の翌日から納付する日までの日数に応じて課されます。割合は年度によって微妙に変わるなど複雑な部分があるため、詳しくは国税庁のホームページ等で調べる必要があります。
(参考URL:国税庁-延滞税の計算方法)
延滞税は、本税にのみ課されます。加算税などには課されません。
実際にどのように計算されるのか
簡単にはなりますが、実際にどのように計算されるのか、例としてご紹介します。
例えば、今まで無申告だった会社に税務調査が入り、5年分の調査によって各年度200万円ずつで合計1000万円の税金を支払う義務が生じた場合を仮定します。
この場合は1000万円の支払いに加えて、「無申告加算税」が課されます。
このときの無申告加算税は、上記③の「実際に調査を受けた後」に該当するため、50万円まで15%、50万円を超える部分に対して20%が加算されます。
計算すると、
50万円×15%=7万5千円
(1000万円-50万円)×20%=190万円 合計197万5千円となります。
適切に申告していれば5年間で1000万円の税金を払っていれば良かったのに、無申告加算税として197万5千円の支払いが追加されてしまいます。
さらに、支払わなかった期間に対する「延滞税」も課されるため、かなりのペナルティが加算されることになります。
延滞税の計算は非常に複雑になってしまうため、ここでは省略させていただきます。
これらのペナルティは経費になりません!
税務調査によって支払うこととなった追徴税を経費に入れることができないのはもちろんですが、その追徴税に課されたペナルティの支払いも経費に入れることはできません。
このような無駄な支出をしなくても良いように、普段から適切な会計処理・適切な申告を心がけましょう。
税務調査で増える支払いは、ペナルティ以外にもあります
税務調査によって所得が増えると、所得税が増えるのは当然ですが、所得に応じて課されている税金は他にもあります。
健康保険料
国民健康保険料も所得に応じて課されているため、所得が増えることで支払額も増えてしまいます。料率は市区町村ごとに異なります。
住民税
住民税には「均等割」と「所得割」があり、「所得割」は前年の所得に応じて課されます。したがって、税務調査によって所得が増えるとその分住民税の支払いも増えることになっていまします。所得割の税率はだいたい10%です。
消費税
「売上が1,000万円以下」であったのに、税務調査が入ることにより売上が1,000万円を超えることになってしまった場合、消費税の課税事業者となり、「消費税」を納める義務が生じることになってしまいます。
事業税
業種によって3%~5%の税率がかかります。
個人事業主の場合は事業主控除によって年間290万円が控除されるため、これによって所得が0になる場合は事業税はかかりません。
税務調査で不正が明らかになると信用を失うことも…
これはペナルティとは違いますが、税務調査によって不正が明らかになってしまうと、取引先からの信用を失うことにもつながってしまいます。その後の事業活動に大きな影響を及ぼす可能性があるため、不正はしないに越したことはありません。
まとめ
■税務調査が入り、追徴課税が行われることになると、状況に応じて「無申告加算税」「過少申告加算税」「不納付加算税」「重加算税」「延滞税」といったペナルティが課されることとなります。
■重加算税が加算される要件である「仮装・隠ぺい」について、簡単に言うと、税金を安く抑えるためにあれこれ操作して申告しているということです。上述した例の他にも様々なケースが考えられます。
調査官から重加算税を指摘されても、回避できる可能性もあります。
■税務調査によって支払うこととなった追徴税と、その追徴税に課されたペナルティの支払いはどちらも経費に入れることはできません。
■税務調査によって所得が増えると、所得税以外にも「健康保険料」「住民税」「消費税」「事業税」といったものの支払いも増えてしまいます。
■税務調査によって不正が明らかになってしまうと、取引先からの信用を失うことにもつながってしまいます。
■税務調査は複数年分まとめて行われるため、1年分のペナルティは少なかったとしても、3年分・5年分・7年分になるとかなりの金額になってきます。
そうならないためにも、適切な申告を行っていくことを心がけましょう。
税務調査について何かお困りの方は、ぜひ弊社にご相談ください。
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