税務調査で指摘されやすいポイントとは? ~売上・売上原価~

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今までの記事では、「税務調査って何?どんなことをする?どうすれば良い?」といった税務調査全般に関することを中心にまとめてみましたが、今回からは税務調査で見られる項目の各ポイントについて、何回かに分けてご紹介していきたいと思います。

税務調査で「売上」「売上原価」は必ず見られます

今回は「売上」と「売上原価」についてご紹介します。

売上と売上原価は、事業活動を行う上でメインになる項目であり、金額的にも大きくなりやすい項目です。

売上・売上原価については税務調査で必ず見られるといっても過言ではないほどの最重要ポイントです!

なぜなら、金額が大きい項目で不正を発見すれば、それだけ多額の追徴税が取れることにつながるからです。不正を発見し、追徴税をできるだけ多く取りたいという調査官の目的に合致するのです。

このように売上の過少計上・売上原価の過大計上は、多額の追徴税につながる可能性が高いため、調査官もほとんどの場合で最初に確認してくるのです。

売上について調べられるポイント ①売上除外

売上除外とは、売上を意図的に帳簿に計上せず、売上を過少に申告することです。

単純にミスで計上していなかった場合は計上が漏れていたということで済みますが、売上除外として判断された場合は「不正」であり、「重加算税」の対象となってしまいます。

例えば、売上代金が事業とは関係のない個人の口座に入金されるように仕組んだり、現金で売り上げた代金をこっそり抜き取って自分の懐に入れてしまったりすると、売上除外に該当することになります。

「ちょっとぐらい売上を抜いてもバレないでしょう」

なんて思うかもしれませんが、調査官はどんな方法で売上除外が行われるかを熟知しており、それを発見する術も持っています。

銀行取引の履歴を調査することもできますし、飲食業など現金商売が多いところでは客のフリをして実際に客の入りやレジ・伝票の使用状況などをあらかじめ入念な調査をしたうえで税務調査にやって来ることもあります。

そして、事前調査時に自分が食べたものの売上代金が、きちんと管理されているかどうかを確認するのです。

これはほんの一例に過ぎず、あらゆる方法で調査し、売上除外を見つけ出します。

見つかる危険性が高いうえ、重加算税まで課されるとなると売上除外を行うメリットはありません。絶対にやめておきましょう。

売上について調べられるポイント ②計上漏れ(期ずれ)

売上の計上漏れとは、当期に計上するべきだった売上が、処理のミスにより翌期に計上されていることを言います。

販売業を例にすると、出荷した日を基準とする「出荷基準」、取引先に到着した日を基準とする「着荷基準」、取引先で検収された日を基準とする「検収基準」など、売上の計上基準はいくつかあります。

その中から選択したものを毎期継続して適用することが求められており、これを正当な理由なく変更することは禁止されています。

税務調査の際には、特に期末日近くの取引において、各社で定められた売上の計上基準に基づいて計上されているかを確認されます。

単なるミスであればまだ良いのですが、意図的に翌期に売上を繰り延べていると判断された場合にはこちらも「重加算税」を課される可能性があります。

調査官に目を付けられないように、期末日近くの取引については注意深くチェックしておくことをオススメします。

また、もしも翌期に計上していた売上を当期に計上するように調査官から指摘された場合は、売上原価等その売上に関連する経費の計上時期にも気をつけましょう。

収益と費用は、同じ期間に対応するように計上することが原則です。

翌期に計上していた売上を当期に修正する場合で、その売上に関する経費も翌期に計上している場合は、その経費も当期に修正することを忘れないようにしましょう。

そうすることで、追徴税の額を抑えることができます。

しかし、調査官が少しでも多くの追徴税を取ることしか考えていない場合、経費の修正まで指摘してくれない可能性があります。

そのときは、その売上に関わる経費も翌期に計上していることをきちんと説明し、経費についても当期に計上することを認めてもらうようしっかりと主張することを忘れないようにしましょう。

売掛金の計上額も重要なポイントです!

売掛金は、サービスや商品の提供が完了したのに入金がまだの場合、将来的に対価を受けとることができる債権として、売上の相手勘定として計上されます。

売上と大きく関わる科目であるため、売掛金も必ず税務調査で確認される項目と言えます。

過去数年、売上・売掛金ともに同じような水準で推移していたのに、ある期だけ売上に比べて売掛金の計上額が少ないなどの異常な変動があったりすると、

計上していない売掛金(売上の過少計上)は無いか?

不適切な貸倒処理が行われてないか?

といった疑いを持たれることになります。

こうなると調査官は、受注伝票や出荷伝票、売上伝票などあらゆる書類を確認して売掛金の計上から入金までの流れを調査します。

売掛金の管理は大変ですが、「売掛金の発生や入金などの取引記録がもれなく計上されているのか」「それぞれの売掛金の入金期日はいつなのか」「どの取引先に対する売掛金なのか」といったポイントはしっかり管理しておきましょう。

そうしておくことで、調査官から質問されても的確に答えることができます。

売上原価について調べられるポイント ①期ずれ

先ほど述べたことと重複しますが、収益と費用は同じ期間に対応するように計上するのが原則です(「費用収益対応の原則」と言われています)。

税務調査では、当期に計上すべき売上原価が漏れていないか、翌期に計上すべき売上原価が当期に計上されていないかといった「期ずれ」がないかをチェックされます。

どちらかと言うと、翌期に計上すべき売上原価が当期に計上されていないかどうかは細かくチェックされやすいです。

これは、費用の過大計上になり利益が過少に申告され、税額が少なくなることにつながるからです。

特にチェックされやすいのは、ずれが生じやすい期末日近くの取引です。

期末日近くに仕入れた商品や完成した製品が、その期末までに販売されたのか、販売されずに在庫として残っているのかをきちんと確認し、その期の売上・売上原価が正確に対応するように計上されているかどうかを注意深く確認しておきましょう。

売上原価について調べられるポイント ②棚卸資産の評価

当期に売上原価にならなかった棚卸資産は、期末棚卸資産(在庫)として貸借対照表上に計上されることになります。

帳簿上の在庫数量よりも、実際の在庫数量が少なくなっている場合は「棚卸減耗損」として費用を計上することができます。

あまりにも帳簿と実際の乖離が大きいと、税務調査で指摘されやすくなるので普段からきちんと管理しておきましょう。

また、先ほどの「期ずれ」とも関連してきますが、ここで注意しなければならないポイントがあります。それは、期末日前に仕入れた商品が、期末日時点で手元に到着していないというケースです。まだ届いていないだけで棚卸減耗損ではないので、期末の実地棚卸の際に費用計上してしまわないように特に気をつけましょう。

その他、会計基準において棚卸資産の帳簿価額よりも正味売却価額が下回っている場合は「商品評価損」として費用を計上し、正味売却価額で貸借対照表に記載することが定められています。

しかし、税務上はこの商品評価損が無条件に費用として認められるわけではありません。

棚卸資産の価額が帳簿価額を下回ることになり、その原因が「災害による著しい損傷・その他の政令で定める事実が生じた場合」に限り、費用として認めてもらうことができます。

その他の政令で定める事実として、法基通9-1-4・9-1-5において

■著しく陳腐化したこと

 例)・季節商品で売れ残ったものについて、今後通常の価額では販売できないことが明らかである。

・型式、性能、品質等が著しく異なる新製品が発売されたことにより、今後通常の方法により販売することができないようになったこと。

      

■破損・型崩れ・棚ざらし・品質変化等により通常の方法によって販売することができなくなった場合

以上のように定められています。

物価が変動したこと・需要を読み違えたことなどによる過剰生産・建値の変動などによって価値が低下した場合の商品評価損は、税務上は費用に計上することができません。

このように、会計上と税務上で規定が異なることによって、費用が認められない場合もあります。

売上が1000万円を超えると消費税を払うことに!!

基準年度(前々事業年度)の売上が1000万円を超えると、消費税の納税義務が発生します。

したがって、税務調査によって基準年度の売上が1000万円を超えることになった場合、そのまま消費税の調査も行われることになってしまうのです。

消費税は簡単に言うと、売上時に消費者からもらった消費税(受取消費税)から、仕入時に自分が払った消費税(支払消費税)を差し引いた差額を納めることになります。

(例)売上2000万円、仕入1000万円、税率10%とすると

「受取消費税:200万円」-「支払消費税:100万円」=「納税額:100万円」

という計算になります。この支払消費税分を差し引くことは「仕入税額控除」とも呼ばれています。

仕入税額控除を受けるための要件

ここで恐ろしいのが、この仕入税額控除を受けるためには、帳簿および請求書等の保存が必要とされています。

もしこれらの書類がきちんと保存されていなかった場合は、先ほどの例でいくと、100万円の控除が受けれなくなり、200万円まるまる消費税を納めなければならなくなってしまうのです。

このことからも、帳簿や請求書といった記録を保管しておくことの必要性がわかります。

ただ、どんどん話が難しくなってしまうため簡単に書きますが、仕入税額控除の計算方法には「原則課税方式」と「簡易課税方式」の2種類あります。

先ほどの計算例は、「原則課税方式」の場合を想定しています。

基本的には「原則課税方式」となりますが、要件を満たすと「簡易課税方式」を選択することができます。

「簡易課税方式」を選択すると、みなし仕入率というものを用いて仕入税額控除額を計算するため、帳簿や請求書の保存をしてなくても、一定の割合の控除を受けることが可能になります。控除の割合は、業種によって定められています。
簡易課税方式を選択して2年間は原則課税方式に戻せないといった制約もあり、「原則課税方式」の方が結果的に支払う額が少なかったという場合もあるため、どちらを選ぶかは慎重に検討しなければなりません。

まとめ

■売上と売上原価は金額的に大きくなりやすい項目であり、不正を発見すればそれだけ多額の追徴税を取れることにつながるため、税務調査では必ず見られます。

■売上について調べられるポイントとして、①売上除外、②期ずれといったものがあります。

調査官はどんな方法で①売上除外が行われるかを熟知しています。見つかる可能性が高いうえ、見つかると重加算税が課されることになるため、売上除外を行うメリットはありません。

②期ずれが見つかった場合は、その売上に関連する費用もずれて計上されていないか確認するようにしましょう。

■売上と関連の深い「売掛金」も調査されやすいポイントです。売掛金の認識から入金までの流れをしっかりと管理しておくことが重要です。

■売上原価について調べられるポイントとして、①期ずれ、②期末の棚卸資産の評価といったものがあります。期末日近くの取引が適切に処理されているかどうかのチェック、異常な棚卸減耗が生じないように日ごろからの在庫管理の徹底を心がけましょう。

■売上除外、期ずれなどの修正により基準年度の売上が1000万円を超えることになると、消費税の納税義務が発生することになります。仕入税額控除を受けるためには、仕入に関する帳簿および請求書等の保管が要件とされています。この控除を受けれるかどうかで消費税の支払額が大きく変わるので、事業に関わる記録は必ず残しておくようにしましょう。

税務調査に関して不安がある方は、お気軽に弊社までご相談ください。

この記事を書いた人

税理士法人CUBE
税理士法人CUBE
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