無申告本当にあった怖い話 脅迫編
税務調査の現場では、信じられないようなやり取りが実際に起こります。
今回は「忙しくて対応が遅れた」だけなのに、いつの間にか“脅迫まがい”の展開に巻き込まれた、とある法人のケースです。

目次
仮装隠ぺいがあると重加算税を取られる
重加算税は、仮装・隠ぺいが認定された場合に課される最も重いペナルティです。
無申告事案では原則 40%(一定の悪質類型では 45%)、過少申告事案では 35% が目安です。
重加算税の要件(仮装・隠ぺいの認定基準、故意性の判断など)については、こちらのコラムで詳細に解説されています:
無申告本当にあった怖い話 重加算税編(要件解説)
「忙しくて申告が遅れた」だけでは本来、重加算税は課されにくいのですが、調査官の判断や処理次第で“悪質”と見なされ得るリスクがあります。

仕事が忙しくて連絡が取れなかったことを理由に「重加算税」?
この法人の社長は繁忙期で電話に出られず、折り返しも遅れ気味でした。
すると担当官はこう釘を刺したのです。
「再三の連絡に応じないのは悪質で、隠ぺいと判断せざるを得ない」“忙しさ”が“仮装隠ぺい”扱いされる瞬間。
その誤認が、無申告から重加算税適用へと道を開いてしまいます。

知識のなさにつけ込む高圧的な態度
社長は税理士未登用、税務知識も薄い。
それを察した担当官は、態度を次第に強く。
「このままだと追徴だけでなく告発もあり得ますよ」
本来は納税者理解と協力を重視する手順が求められますが、現場では知識のない側が弱点となりやすいのです。

「法人を解散すれば個人には請求されない」という“提案”
ある日、担当官がこう言いました。
「税額が重すぎるなら法人を解散すればいい。個人に請求は来ませんよ」
実務上、法人税債権は法人に属するため、法人を解散清算し資産が足りなければ、一般には代表者個人に請求は及びません(=個人は法人の税金を免れることができる)。
ただし、資産隠しや不正、第二次納税義務の成立等の例外には要注意です。

税務署には「課税課」と「徴収課」が存在する
税務署には主に二つの部署があります:
- 課税課:調査・更正など、税額を決定する部署
- 徴収課:差押、回収、納税猶予など、税金を実際に取り立てる部署

「課税課」と「徴収課」の評価構造が生む歪み
- 課税課は、重加算税を含む課税実績で評価が上がる
- 徴収課は、たとえ実際に回収されなくとも、法人解散で“回収見込みが失われた”と判断されれば、処理を終えたものと見なされ評価対象となる
一見課税課が納税者が払えない多額の税金を課すことによって、徴収課の回収の確率が下がってしまい徴収課が損をしそうです。しかし実際に税金が回収できなくとも徴収課には別の方法で評価を上げることができるのです。
この評価構造が、納税者不利の動機を無意識に強めてしまうのです。

誰が得をして、誰が損をするのか
立場 | 実際に起きること |
納税者 | 法人を解散すれば、原則として個人は請求を逃れ “逃げられる” |
課税課 | 重加算税の課税で数字が立つ |
徴収課 | 法人解散で回収不能でも“処理済み”扱いで評価される |
国 | 実際の税収が入らず、まさに“国だけが損をする” |
このカラクリこそ、無申告調査における最も恐ろしい構造です。

困り果てて弊社に税務署対応を依頼
社長は精神的にも追い詰められて弊社へ。
私たちは、担当官とのやり取り、通話履歴、提出書類の受領記録、やり取りの時間軸など、事案を一つひとつ丁寧に整理。
調査の“不当性”や“判断根拠の薄さ”を明らかにし、反論を組み立てました。

高圧対応を逆手に取り、税額を圧縮
交渉の鍵となったのは、
- 担当官の高圧発言
- 手続き上の瑕疵
- 納税者自身の修正・納付意思の早期表明
これらを組み合わせて主張した結果、重加算税適用は回避または大幅軽減。
最終的に、追徴金は無申告加算税レベルに抑えられ、資金繰りを踏みとどまることができました。

まとめ:怖い話を“自分ごと”にしないために
- 無申告=必ず重加算税ではない
- 連絡遅延だけで隠ぺいとは認められない
- 法人解散による個人免責の可能性はあるが、例外リスクも併せて確認すべき
- 現場では評価制度の影響で、納税者に理不尽な動機が働くことがある
- だからこそ、早めの専門家関与が不可欠です
重加算税の要件を含めた詳細解説は、冒頭のリンク先コラムで参照できます:
重加算税の要件と運用(無申告本当にあった怖い話 編)
⇒無申告や税務調査に関しての面白動画はこちらから

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