税務調査とは?何年さかのぼって、どれくらい税金を取られるの?

Audit And Fraud Investigation. Auditor Using Magnifying Glass On Document

税務調査とは?

日本では、納税者自らが税額を計算・申告して税金を納める「申告納税方式」がとられています。

「税務調査」とは、この申告が正しく行われ、税金が正しく納められているかどうかを確認するために行われる調査のことです。

調査官がいきなりやって来てドラマのような捜査が行われるというイメージを持っている方も多いかもしれませんが、実際にそのような捜査が行われることは滅多にありません。

今回は税務調査ってどんなものなのか、簡単にまとめてみました。

税務調査の種類

税務調査には大きく分けて「任意調査」と「強制調査」の2種類があります。

さらに、任意調査のなかで「事前予告調査」と「無予告調査」に分かれています。

それぞれについてご紹介します。

任意調査

税務調査のほとんどのケースがこの「任意調査」と呼ばれるものになります。

「任意」と聞くと断ればいいじゃないかと思うかもしれませんが、そういうわけにはいかず、税務調査自体を断ることはできません。

 「任意」とは、突然事務所に押し掛けて、勝手に帳簿書類などの調査をしてはいけないということです。一応、「今から調査を始めますが良いですか?」ぐらいの確認を取ってから開始されます。

ただ、基本的に税務調査官から質問されたり、資料の提出を求められたりした場合は断ることはできません。すぐに答えられない正当な理由があれば、調査日を変えるなどの調整を行うことは可能です。

また、任意調査の中にも種類があります。

税務署から事前通知があり日程調整をしたうえで行われる「事前予告調査」がほとんどですが、たまに予告なしの抜き打ち調査が行われることもあり「無予告調査」と呼ばれます。

事前予告調査

ある日突然、税務署から連絡が入ります。

税務調査を行う旨を伝える事前通知です。

この事前通知の際に、税務調査の日程や目的・必要となる帳簿書類等が通知されます。

先ほども書きましたが、この時点で税務調査自体を断ることはできません。

しかし、ここで税務署から通知された日にちで実施しなければいけないわけではありません。

税務調査の日程は事業者側の予定が優先されるので、日程調整が可能です。

税務調査を受けるにも事前準備が必要です。

いきなり日にちを伝えられても、対応できません。

とは言え、あまりにも先延ばしすることは調査官からの印象も悪くなってしまうため、好ましいことではありません。

「いろいろ予定がありすぐに決めることが難しいので折り返し連絡する」と伝えて一旦電話を切り、自分1人で対応することに不安がある場合は、税理士に相談するのも1つの方法です。

無予告調査

「無予告調査」は抜き打ちで行われるため、日程調整も無くやってきます。

無予告調査の目的は、事前通知をすることによって納税者が都合の悪いことを隠し、その場しのぎの取り繕いを行う可能性が高いと判断した場合に、それを防ぐことです。

例えば現金商売の場合、事前通知をすることでその時だけ現金の調整をされてしまうと、税務調査に出向く意味が無くなってしまうからです。

また、無予告調査は抜き打ちで行われるといっても、調査官は行き当たりばったりで突然やってくるわけではありません。

例えば飲食店に無予告調査に入る場合、それまでに客を装って来店し、お店の繁盛具合や伝票・レジの使用状況といった現金の管理方法など、しっかりと内偵調査を行ったうえで満を持してやってきます。

しかし、焦らず冷静に対応しましょう。無予告調査も任意調査の1種であるため、勝手に調査を始めることはできません。

「大事な予定があるから今日は対応できない」などの正当な理由があれば、日程調整も可能です。

 また「会社・店舗の中に入れない」のもポイントです。

税理士に連絡したい場合や、予定があって対応が難しい場合でも、会社の中に入 れてしまうとなし崩し的に税務調査が始まってしまう可能性があります。

経営者の皆さんは、突然やってきても慌てることなく冷静に対応し、すぐに税理士に相談しましょう。

強制調査

こちらが世間では「マルサ」と呼ばれる国税局査察部によって行われる調査です。裁判所の令状によって強制的に捜査が行われるため、任意調査のように日程調整などを行うこともできません。

悪質な脱税を立件するような時に行われるため、滅多にあることではありません。国税庁の発表では、令和2年度に行われた強制調査は113件で、そのうち83件が検察庁に告発されたとのことです。

強制調査となると逮捕される可能性が高いだけでなく、強制調査が入ったという事実だけで社会からの信用を損なうため、非常に大きなダメージを受けることになります。

税務調査の流れ・どんなことが行われるのか

個人事業主の場合は通常1~2日、中小法人の場合でもだいたい2~3日で終わるのが一般的です。

初日は、まず事業に関する説明を求められ、現金のチェック、帳簿や領収書などの書類のチェックへ進んでいきます。そして、調査で挙がった疑問点や指摘事項の指摘を受けて1日目が終わります。

2日目に、1日目に指摘を受けた事項に対する交渉が行われたり、その他調査官が必要と判断した調査が行われたりします。

そして、最終的にまとめられた指摘事項が伝えられ、納得すれば追徴税額が決定するという流れになります。

どんな調査が行われるのか、ほんの一部ですがご紹介します。

帳簿調査

売上や仕入・現金の管理状況など、事業活動に関する様々な事項について帳簿書類を基に調査を行います。売上除外や経費の架空計上などの不正が行われていないかどうかチェックされます。

また、帳簿書類だけで不正の発見が難しい場合は、業務の中で使用されている記録やメモといった原始記録と呼ばれるものまでチェックされることもあります。

反面調査

調査に協力しなかったり、必要な帳簿書類が保存されていなかったりといった場合に、取引先等を調べることで適切な処理が行われているかどうかを確認します。

基本的にはこの反面調査を拒否することはできません。

取引先にも迷惑がかかるうえに、もし不正が発覚すると、信用を失い取引停止といった事態に陥る場合もあります。

何気ない質問にも気をつけて!

調査官は追及の糸口を常に探しています。趣味などのプライベートな質問でも、うっかり必要のないことまでしゃべってしまわないように注意してください。

万が一、所得に見合っていない趣味を答えてしまうと、そこから所得隠しが発覚してしまう可能性もゼロではありません。

税務調査は何年分さかのぼって調査されるのか

税務調査は、通常は3年(無申告の場合は通常5年)、問題が見つかった場合には5年、偽りその他不正の行為が見つかった場合は7年間さかのぼって調査されることになります。

偽りその他不正の行為とは、「売上の一部を除外して所得を過少に申告した」「経費を架空計上した」などといった不正行為の中でも、金額が大きい・税金の徴収を著しく困難にする工作を伴うなど極めて悪質であると判断された場合に該当します。

税務調査に入られる周期は?

規模が大きい会社や、不正が行われやすいような業種のところは定期的に入られる可能性もありますが、起業以来1度も調査されたことが無いという会社もあります。

一般的に3年・5年とさかのぼって調査されることが多いため、その周期に合わせて入ることが多いとも考えられますが、完全にそうとも言い切れません。
税務調査に入られる周期は決まっていないので何とも言えないというのが正直なところです。

狙われやすくなるポイントはあります

税務調査に入られる周期については何とも言えないですが、税務署に狙われやすくなるポイントはいろいろと考えられます。

・数字の変動が大きい

・売上に比べて利益が少ない

・過去に税務調査に入られたことがあり、不正を指摘されたことがある

・不正が見つかった会社と取引をしていたことで、芋づる式に調査される

・売上が1000万円弱の事業者

などです。

これについては法人・個人事業主の税務調査に入られる確率ってどれくらい?の記事に少し詳しく記載していますので、ぜひご覧ください。

税務調査が入るとどれくらい税金を取られる?

税務調査によって所得が増えることになった場合、追加で納税しなければなりません。

さらに、状況に応じて「無申告加算税」「過少申告加算税」「不納付加算税」「重加算税」「延滞税」という税金の支払いが命じられます。

例えば、5年分の税務調査によって1000万円の支払い義務が生じ、今まで無申告だった場合は「無申告加算税」として50万円まで15%、50万円を超える部分に対して20%が加算されます。

計算すると、

 50万円×15%=7万5千円

 (1000万円-50万円)×20%=190万円

 適切に申告していれば5年間で1000万円の税金を払っていれば良かったのに、無申告加算税として197万5千円もの支払いが追加されてしまいます。

さらに、支払わなかった期間に対する「延滞税」も課されるため、かなりのペナルティが加算されることになります。延滞税の計算は非常に複雑になってしまうため、ここでは省略させていただきます。

その他の詳しい税率や適用条件については税務調査で修正申告が必要に。どんなペナルティを受ける?という別記事でご紹介したいと思います。

税務調査官にノルマはあるのか

結論から言うと、税務調査官にはノルマがあります。

ただ、「何円以上の追徴税を取る」という金額のノルマではなく「年間20~30件」という調査件数のノルマです。

では、なぜ税務調査官は多額の追徴税を取るためにあれこれ調査をするのでしょうか。

それは、ノルマとは別で税務調査官自身の業績評価に影響があるからです。

多額の追徴税を課したり、不正を多く発見したりすると高い評価を得ることができます。それによって自らの昇進がかかっているため、税務調査官は何とかして追徴税を取ってやろうと意気込んで調査にやってくるのです。

税務調査で逮捕されるのか

通常の税務調査で逮捕されることはほとんどありませんが、税務調査がきっかけとなって逮捕されることはあります。

通常行われる「任意調査」は、刑事事件として立件することが目的ではなく、申告が適切に行われているかを調査し、税金をきちんと支払ってもらうことを目的として実施されます。

しかし、「任意調査」の過程であまりにも悪質な脱税や、巨額な脱税が発覚すると「強制調査」に切り替わり、結果として逮捕されることもあります。

ポイントは脱税が「故意」に行われているかどうかです。

調査官は様々な証拠を集め、故意であることを立証しようとしてきます。

実際に、強制調査に入られても、故意性が認められず逮捕に至らなかったケースもあります。

まとめ

■税務調査とは、所得の申告が正しく行われ、税金が正しく納められているかどうかを確認するために行われる調査のことです。

■税務調査には大きく分けて「任意調査」と「強制調査」の2種類があり、任意調査のなかで「事前予告調査」と「無予告調査」に分かれています。

■ほとんどが「事前予告調査」ですが、事前通知をすることで不正をごまかされる可能性が高いと判断されると「無予告調査」が行われることもあります。

この記事を書いた人

税理士法人CUBE
税理士法人CUBE
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